GOGGLE 秋号「ゴーグル人間マニフェスト」で
弊社が紹介されました。

GOGGLE 2004.10.03 Autumn


発行:モーターマガジン社 季刊GOGGLE
   









基本的には、初期モデルからなにひとつ構成が変わっていないコミュニケーター。初代機のお客さんから、いまだに修理の依頼が届くのがケテルの誇りである。
●ケテル 03-3603-8889
    会話を楽しんで、
親子タンデムができれば……。
     クルマの車内にいるように、タンデムしているライダー同士で話せたら−−。その思いをコミュニケーターという形にしたのがケテルだった。

 「僕がこどもの頃、亡くなったオヤジのBMWの後ろに乗っかって、いろんなところに連れてってもらったんです。オヤジとしたら、こどもを後ろに乗せておくと、寝ちゃって危なくてしょうがない、ってタンデムアンプを作ったみたいでした」というのは、ケテルの代表を務める蜂須賀康浩さん。

 先代の社長がもともとアマチュア無線好きで、バイクやサイドカーでも無線を楽しみたい、と思ったのがケテル発祥のアイディア。やがてケテルのタンデムアンプは、口コミで広がっていった。

 ケテルの製品といえば、やはりタンデムアンプ。ボックスにマイクとスピーカーをつなぐことによって、バイクに乗りながら“会話”できるというこのシステムは、実はケテルの30年にものぼる歴史の中で、たった2種類の製品ラインナップしか存在しない。

  「ひとつはオヤジが創業の頃に作り出したタイプで、乾電池タイプの、前後のライダーだけが話せるもの。それから15年たって発売したのが、今の主力商品でもある、 4人まで通話できて、携帯電話やCD/MDプレイヤー、無線機にも接続できるタイプ。基本はこのふたつです」

 だから、今でも25年、30年前に買ってくれた古いお客さんから修理の依頼が舞い込むこともある。 F1のピットとドライバー交信に使うシステムや、海外でも特許を取得したウィンドノイズキャンセルマイクロフォンなど、最先端通信機器のイメージがあるケテルとは、実は古くからの個人客のリペアにもいちいち応じている、そういう会社なのだ。

 少し前のF1界では、半数ほどのチームがケテルのマイクを使っている、と言われた時代があった。けれど、130DBもの大音量がドライバーの背後でなり続けるF1において、通話音声だけを忠実に拾い上げる技術は、バイクのために開発されたものなのだ。

  「接話型と言って、口につけて話すタイプのマイクなんですが、もちろんバイクで走っているときに使いますから、走行風でノイズが入ったり、会話が途切れない工夫を積み重ねてきました。それが、 F1や軍用などでも評価をいただいているのは、すべてバイクという条件のよくない中での実験開発があったからなんです」

 実験開発は今も進んでいて、現在はブルートウースによる無線通信の実用化が目前。03年の東京モーターショーでも、アライヘルメットのブースで、ヘルメット内蔵型の無線機が展示されてもいたように、第3世代のコミュニケーションが形になろうとしている。さらに、ケテルに追い風となりそうな、来年から実施される高速道路のタンデム解禁。けれど、ケテルの夢は別のところにある。 「タンデムOKになってたくさん注文をいただくのはもちろんうれしいんですが、実は親子でのタンデムにアンプを使って欲しいな、っていうのがケテルの夢なんです。2人乗りが急に日常化するわけではないでしょうし、こどもを乗せるために安全のために使ってもらって、将来のバイク乗りを増やしていきたいんです」

 小さいうちからバイクにし親み、バイクがいいな、と思って乗り続けるひとつのサンプルケース。それが実は、蜂須賀さんなのである。

 社名となったケテルとは、実はKTエレクトリックの略である。 Kとは、BMWに乗っかった先代社長をあらわす。“クマさん”のKで、蜂須賀さんが“トカゲ”と呼ばれていたからT。ケテルは、親子タンデムの通話を育む、夢の通信機器メーカーだったのである。
   
文●中村浩史
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